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2009年2月

2009年2月20日 (金)

Out – In 更なる成長を求めて海外へ ― 日本製紙、豪3位買収を発表

(ニュースの概要)

日本製紙グループ本社は十六日、豪製紙三位のオーストラリアンペーパーを買収すると正式発表した。買収額は六億豪ドル(約三百六十億円)で日本の製紙会社の海外M&A(合併・買収)では過去最大規模となる。ライバルの王子製紙と比べて出遅れていた海外事業で巻き返し、内需依存からの脱却を急ぐ。2009/02/17, 日本経済新聞 朝刊, 11ページ

(解説)

国内市場の飽和、縮小 -> 成長を求めて海外へ、という方程式は、ここ最近の定番である。最近のビールメーカーのM&Aを見ても顕著な動きだ。それに加えて円高基調にあるという要因もある。製紙業界は業界再編が起こると予想されつつ、王子製紙が北越製紙へのTOBに失敗して以来、こう着状態が続いているように見える。その状況を打破する意味でも海外での成長にフォーカスするということだろう。

(疑問1

株価への影響は?

(ニュースはこう読め)

216日の日経朝刊一面に報道されてから、1617日と株価は上げたがその後1819日は日経平均の下落に引きずられるように下落している。これは、UBS証券の目標株価引き下げも大いに影響していると考えられる。それによると豪州製紙メーカーの買収も、短期業績への貢献は限定的な上、低収益・低成長と見られる同事業に360億円拠出する同社の戦略に疑問を感じる」と指摘した上で、投資判断は「Neutral」を継続、目標株価は3,600→2,500円へと引き下げたことが嫌気されている。

(疑問2)

360億円の買収価格は妥当か?

(ニュースはこう読め)

買収価格に影響を与える要因の大きなものは3つある。ひとつは、現在の収益水準、利益率、もうひとつはその成長性、最後は安定性だ。現在の収益水準が低くても高成長が見込める業界(会社)であれば、高値での買収も合理性がある。また、利益率が低くても安定的な利益が見込めるのであれば、高い利益率で不安定(つまり業績の変動が大きい)会社よりも高値がつく場合も考えられる。

現在の利益水準と株価(時価総額)を比較すると株価が割高か割安かの判断ができる。同じような成長性であれば(つまり同じ業種であれば)、その比率は通常あまり変わらない。成長率や安定性は同じ業界に属していればそれほど変わらないと推測されるからだ。同じ業界で伸び率が顕著であれば(つまり今後のシェアの増加が見込まれれば)その比率は他社よりも高くなる。

ここで単純に試算してみよう。日本製紙の営業利益(20093月期見込み)が240億円。219日の終値ベースでの時価総額は2727億円。有利子負債は8049億円。有利子負債と時価総額の合計(これがEVとなる)は1776億円となる。この数字を営業利益で割ると45倍となる。これはEV/EBIT 倍率といって、買収価格のひとつの指標になる。

一方買収対象のAP社であるが、有利子負債が書いていないので推計する。総資産が876億円。日本製紙と同じ財務構造と仮定すれば、総資産の50%が有利子負債となるので、438億円。360億円と438億円の合計は798億円。このEVを営業利益(EBIT)の18億円で割ると44倍。ほぼイーブンである。

ここから推計すると、オーストラリアでの製紙業界の成長率は日本と同様(つまり成熟産業)であると見ており、割高でも割安でもないように見える。この買収によって日本製紙のEV/EBIT倍率は変化しないため、理論的には株価には影響を与えないように見える。

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