赤字事業からの撤退 業界再編 ― HDD事業 東芝、富士通と買収交渉
(ニュースの概要)
東芝は富士通のハードディスク駆動装置(HDD)事業を買収する方向で最終調整に入った。月内の合意を目指す。東芝は買収により、ノートパソコンなどのデータ記憶装置として成長が期待できる小型HDDで世界首位に浮上。富士通は収益改善に向け赤字の同事業から撤退する。
2009/01/14, 日本経済新聞 朝刊, 1ページ
(解説)
まず、2008年10月2日の日経1面に富士通がHDD次長を米ウエスタンデジタルへ売却すると報じられた。売上3300億円規模の事業からの撤退という国内電機大手の事業売却では過去最大級という。売却の意図は明確で、赤字事業からの撤退で収益基盤を固めるというものだ(この報道に関しては同日に富士通は否定のコメントを出している)。営業損失を計上している事業にもかかわらず、売却交渉金額は700-1000億円の見通しだった。しかし、一転して、2008年12月27日の日経にはこの売却を断念するという記事が掲載された。理由は、雇用の維持という面で折り合えなかったこと、円高の影響によって買収金額の折り合いのメドがたたなかったこと、と報じられている。
そこから、さらに転じて、東芝への売却という方向に進んでいる。東芝への売却の可能性は、2008年10月6日の日経産業新聞26ページでの社長インタビューで、明確に否定されていたにもかかわらずである。本当に何が起こるかわからない。
売却金額も300-400億円の見込みと昨年の交渉金額から大幅に引き下げられている。ただし、山形富士通のハードディスク生産部門など一部の部門を引き取らないようで、単純には米ウエスタンデジタルとの交渉金額との比較はできない。
ウエスタンデジタルへの売却の決め手となったのは、事業の一括売却が可能という点であった。東芝への売却はこの報道にもあるとおり、一部の事業は引き継がない。にもかかわらず売却交渉を進めているということは、富士通側にも売却を急ぎ、事業の再編を加速する必要性に迫られていると読むべきだろう。
なお、本報道に対して、報道の直後に両社からのプレスリリースは開示されておらず、肯定も否定もされていない状態である。
(疑問1)
株価への影響は?
(ニュースはこう読め)
直後の東京株式市場では、東芝は小幅安、富士通は大幅に反発、となっている。東芝に関しては、前日に営業赤字見通しが報じられ、さらに赤字事業を買収するという点で、2重にマイナスの材料になっている。しかし、買収を決めたということはそれなりの勝算があり、事業の黒字化、既存事業とのシナジーを進めるということであるため、一概に株価が下がるということは説明できない。現在の株価は割安という見方もできる。
富士通に関しては、赤字事業を300-400億円で売却するために、キャッシュフローの大幅な改善が見込まれるため、株価が上昇することは当然ともいえる。もちろん、今までの株価にこの事業売却が織り込まれていないということが前提ではある。
(疑問2)
次の再編は?
(ニュースはこう読め)
富士通に関して言えば、今回の売却対象とならなかったHDDの部品(ディスク)製造子会社である山形富士通のハードディスク生産部門の売却先を探すということが最重要課題となる。報道でも、昭和電工への売却打診が報じられている。雇用の維持を最重要視するのであれば、ファンドなどのフィナンシャルバイヤーよりも、同業他社(ストラテジックバイヤー)への売却という選択肢を取るだろう。
一方、東芝は、半導体不振で7年ぶりの赤字見通しの中での積極投資であり、早急な事業再編を進めなければならない。小型HDDの分野では世界首位に浮上することから、更なる競争力の強化が期待される。


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