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2009年1月

2009年1月14日 (水)

赤字事業からの撤退 業界再編 ― HDD事業 東芝、富士通と買収交渉

(ニュースの概要)

東芝は富士通のハードディスク駆動装置(HDD)事業を買収する方向で最終調整に入った。月内の合意を目指す。東芝は買収により、ノートパソコンなどのデータ記憶装置として成長が期待できる小型HDDで世界首位に浮上。富士通は収益改善に向け赤字の同事業から撤退する。

2009/01/14, 日本経済新聞 朝刊, 1ページ

(解説)

まず、2008102日の日経1面に富士通がHDD次長を米ウエスタンデジタルへ売却すると報じられた。売上3300億円規模の事業からの撤退という国内電機大手の事業売却では過去最大級という。売却の意図は明確で、赤字事業からの撤退で収益基盤を固めるというものだ(この報道に関しては同日に富士通は否定のコメントを出している)。営業損失を計上している事業にもかかわらず、売却交渉金額は700-1000億円の見通しだった。しかし、一転して、20081227日の日経にはこの売却を断念するという記事が掲載された。理由は、雇用の維持という面で折り合えなかったこと、円高の影響によって買収金額の折り合いのメドがたたなかったこと、と報じられている。

そこから、さらに転じて、東芝への売却という方向に進んでいる。東芝への売却の可能性は、2008106日の日経産業新聞26ページでの社長インタビューで、明確に否定されていたにもかかわらずである。本当に何が起こるかわからない。

売却金額も300-400億円の見込みと昨年の交渉金額から大幅に引き下げられている。ただし、山形富士通のハードディスク生産部門など一部の部門を引き取らないようで、単純には米ウエスタンデジタルとの交渉金額との比較はできない。

ウエスタンデジタルへの売却の決め手となったのは、事業の一括売却が可能という点であった。東芝への売却はこの報道にもあるとおり、一部の事業は引き継がない。にもかかわらず売却交渉を進めているということは、富士通側にも売却を急ぎ、事業の再編を加速する必要性に迫られていると読むべきだろう。

なお、本報道に対して、報道の直後に両社からのプレスリリースは開示されておらず、肯定も否定もされていない状態である。

(疑問1

株価への影響は?

(ニュースはこう読め)

直後の東京株式市場では、東芝は小幅安、富士通は大幅に反発、となっている。東芝に関しては、前日に営業赤字見通しが報じられ、さらに赤字事業を買収するという点で、2重にマイナスの材料になっている。しかし、買収を決めたということはそれなりの勝算があり、事業の黒字化、既存事業とのシナジーを進めるということであるため、一概に株価が下がるということは説明できない。現在の株価は割安という見方もできる。

富士通に関しては、赤字事業を300-400億円で売却するために、キャッシュフローの大幅な改善が見込まれるため、株価が上昇することは当然ともいえる。もちろん、今までの株価にこの事業売却が織り込まれていないということが前提ではある。

(疑問2)

次の再編は?

(ニュースはこう読め)

富士通に関して言えば、今回の売却対象とならなかったHDDの部品(ディスク)製造子会社である山形富士通のハードディスク生産部門の売却先を探すということが最重要課題となる。報道でも、昭和電工への売却打診が報じられている。雇用の維持を最重要視するのであれば、ファンドなどのフィナンシャルバイヤーよりも、同業他社(ストラテジックバイヤー)への売却という選択肢を取るだろう。

一方、東芝は、半導体不振で7年ぶりの赤字見通しの中での積極投資であり、早急な事業再編を進めなければならない。小型HDDの分野では世界首位に浮上することから、更なる競争力の強化が期待される。

2009年1月 4日 (日)

2009年を占う

2009年を占う

激動の2008年が終わり、2009年はどのような年になるだろうか。
M&Aが増える要因、減る要因を整理してみよう。

増える要因
マクロ的に考えると供給過剰の調整がいっそう進むはずだ。つまり、2007年までの経済成長率(全世界規模で5%程度)を前提とした増産計画はすべて白紙撤回され、余剰設備、余剰人員の削減が急務になる。人員に関していえば、派遣切りはすでに2008年のニュースであって、2009年は正社員切り、リストラが進むということが予想される。派遣社員の整理だけでは余剰人員の整理が追いつかないということを意味する。それほど、需要が急速に落ち込んでいる。不要不急の消費は先送りされ、それにあわせて設備投資も先送りどころか縮小を余儀なくされているのが現状である。

さて、供給過剰に対する処方箋はバブル崩壊後の日本経済を振り返ればヒントがあるはずだ。当時は不良債権処理が連日のように報道され、銀行の倒産や国有化が相次いだ。貸し渋りや貸し剥がしという言葉も生まれた。その結果、都銀同士の合併が進み、経済規模に合った会社数に絞り込まれた。

では今後業界再編が起こりそうな業種はどこだろうか?
昨今、業績の急速な悪化が報道されているのが自動車である。トヨタですら赤字となる急速な需要の減少であり、関連するすべての会社にとって猛烈な逆風が吹いている。前回のバブル崩壊時には日産がルノー傘下となったが、今回はどうなるか?GM、フォードが資産売却に走る中、積極的に日本企業買収に走る可能性があるのは、比較的業績が好調であるVWくらいか。VWは日本企業との提携関係もなく、マツダやスズキに出資する可能性はあるかもしれない。また、自動車部品メーカーも今後は淘汰が進む可能性がある。研究開発費の圧縮のためには系列を超えた同業同士の合併もありえる。

自動車需要の動向とも関連が深い石油業界も更なる再編の可能性を感じる。2008年にリリースされた新日本石油と新日鉱ホールディングスの経営統合によって、他社も単独での経営を続けるか否かの判断を迫られることになるだろう。昨年の原油価格の高騰は業界各社の利益を一時的に押し上げる効果があったにせよ、小売、元売、の淘汰は進んでいるように見える。価格以外の差別化要因がほとんどない業界において、また装置産業であることを考えると、寡占化が進まない限り今後の経営は厳しくなるだろう。

もうひとつ注目したい業界は、人材派遣業だ。人材派遣には急速な逆風が吹いており、登録派遣社員の少ない会社の存続は厳しい。大手同士の合併よりも中堅以下同士の統合が進むのではないか。

余剰人員、余剰設備調整の意味でのM&A以外にもプラス要因は考えられる。GM,Fordが子会社売却に走ったように、資金調達の意味での子会社売却である。日本企業はバブル期を経て財務体質が健全化している。そのために、このような事業売却のニーズは今のところ少ないように思われるが、業績が厳しくなり財務が悪化する前に手を打つという経営判断も増えるのではないか。

一方で、世界のほかの企業よりも健全な財務体質を強みとしてIn-Outの買収は増えるだろう。円高も追い風となっている。どう考えても国内需要が飽和している日本でのシェア争いには限界があり、いままで海外のM&Aに積極的ではない企業でも今後は海外企業の買収を検討するようになると思われる。

減る要因
とはいえ、2009年はマイナスの要因も多い。最大の要因は資金調達だ。銀行も積極的な融資は控えている。貸し剥がしまでは大きく報道されていないが、積極的な融資は減るだろう。企業も借り入れ金額が増えることによる格付けの低下、借り入れ金利の上昇は避けたい。人員整理も検討する状況下において、積極的な投資を推進することは控えるだろう。M&Aどころではないという企業も多いはずだ。

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