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2008年10月 2日 (木)

合弁解消

(ニュースの概要)
富士通と独シーメンスは欧州でのコンピューター合弁会社を富士通の完全子会社にする方向で調整に入った。富士通はシーメンスが保有する五〇%の株式すべてを買い取る方針を伝えており、年内の合意を目指す。海外部門の収益力強化が急務の富士通は経営権を完全に握り事業の再構築を加速。採算が悪化している個人向けパソコンから撤退し高収益の企業向けに特化するなど、欧州事業の見直しを進める。

2008/09/24, , 日本経済新聞 朝刊, 1ページ

(解説)
両社は一九九九年十月、オランダに「富士通シーメンスコンピューターズ」を設立した。この合弁会社『富士通・シーメンス・コンピューターズ』は、富士通の欧州現地法人『富士通コンピューターズ・ヨーロッパ (Fujitsu Computers Europe Ltd.)』(売上げ:約20億ユーロ、従業員:約1,600 人) と、シーメンスのコンピュータ部門『Siemens Computer Systems』(売上:約40億ユーロ、従業員:約8,000人) の開発・製造・マーケティングを統合して設立した。富士通、シーメンスの持株比率は共に 50%で、両社から同数の取締役が任命されるという典型的な合弁会社(JV)だ。このJV設立前に両社は20年以上の協力関係にあり、さらに1999年に広範囲な提携で合意をし、その合意の一環として設立された会社が富士通シーメンスコンピューターズである。
当初の予定では、パーソナルコンピュータ・IA(Intel Architecture)サーバ・UNIXサーバ・大型汎用機を合わせた世界市場において、富士通とシーメンスを合わせて第5位の売上げだったものを、この提携により、世界のトップ3を目指すといっていた。
売上が当初60ユーロだったものが、直近では66億ユーロ。10%の伸びではあるが、設立から10年が経過しようとしているこの段階で10%の伸びは、当初の計画通りではなかったものと想像できる。
PCに関していえば、世界シェアはHP、Dellの2強にLenovo、Acerが続き東芝が5位、という状況のようである。おそらく、富士通シーメンス、ソニー、Appleで6位を争うという状況であろう。サーバや大型汎用機を合わせればもう少し順位は上がりそうだ。

(疑問1)
シーメンス撤退の背景は?

(ニュースはこう読め)
JV設立時にはシーメンスの売上が40億ユーロであり、富士通の売上20億ユーロの倍の規模であった。この規模の差で50%-50%のJVを設立したということは、シーメンスの事業における利益率が低いことを意味する。そうでなければ、50-50にならない。シーメンスとしては利益率が(当時から)低かったコンピュータ部門を利益率が高い富士通との合弁化によって改善することを狙ったのであろう。
設立から10年という節目において、コンピュータ事業から撤退するということは最近のシーメンスの動きを見ていれば自然に見える。2005年に携帯電話事業を売却したことをはじめ、電子製品市場から徐々に撤退を始めて、タービンや鉄道車両やオートメーション設備などの工業製品の生産に重点をシフトさせてきている。合弁会社設立後も著しい伸びを達成することもなかったため、撤退は当然の流れといえる。

(疑問2)
富士通による買収の背景は?

(ニュースはこう読め)
富士通にとってはコンピュータ事業が本業であり、シーメンスにとってのコンピュータ事業と、富士通にとってのコンピュータ事業はその意味合いが全く違う。富士通にとって世界シェアを維持するためにもヨーロッパという大きな市場からの撤退はその選択肢にはないはずだ。富士通の連結売上は5兆3000億円であり、そのうちヨーロッパでの売上は7699億円とアメリカにおける4699億円よりも3000億円多い。また、富士通シーメンスは50-50の合弁会社であり、連結子会社ではない。連結子会社ではないという意味は、連結売上高に富士通シーメンスの売上66億ユーロ(154円換算で、1兆164億円)は含まれていない(利益のうち出資比率部分、すなわち50%は連結利益に反映されている)。
利益面では、ヨーロッパとアメリカで完全に逆転する。ヨーロッパにおける営業利益7億円に対しアメリカは92億円。ヨーロッパの利益率の低さ(0.09%!)が目立つ。富士通シーメンスもかなり低いが税引き前利益率で1.5%だ。アメリカの営業利益率は2%。
記事によれば利益率の低い個人向けパソコンから撤退する方向であり、それによって、1.5%の利益率がアメリカ並みの2%にはなるだろう。さらに合弁会社特有の意思決定スピードの遅さが解消されることによる伸びは期待できる。

(疑問3)
株式売買価格に2倍の乖離がある。なぜか?

(ニュースはこう読め)
富士通の買取希望価格は5億ユーロ、シーメンスの売却希望価格は10億ユーロと報道されている。税引き前利益で1億ユーロの会社であり、50%の株式を買い取るための価格としては、5億ユーロでは利益の10倍(1億ユーロの利益の50%で5000万ユーロ。これを5万ユーロで買い取れば10倍)。10億ユーロでは利益の20倍になる。
富士通のPERを見ると約20倍である。つまり税引き後利益の20倍ということであり、税引き前利益の20倍を要求するシーメンスの価格は高すぎるように見える。足元をみられているかもしれない。個人的には利益率(と成長率)の低いビジネスであれば5億ユーロでも高いと思う。
また、個人向けパソコン事業の売却金額にも影響されるだろう。これが仮にDellなどに高く売れれば、株式の買い取り価格にも反映される。10億ユーロはそれを高めに見込んだ金額かもしれない。

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