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2008年6月25日 (水)

クロスボーダーM&A 国境を越えたM&Aの背景は?

(ニュースの概要)

第一三共はインド最大の製薬会社、ランバクシーラボラトリーズを買収する。TOBで過半数の株式を取得する。買収総額は3000-4000億円。ランバクシーは世界約50カ国で後発医薬品事業を展開している。第一三共は世界規模で需要の広がる後発薬市場に本格参入する。(2008年6月11日日経夕刊一面)

(解説)

製薬会社の国内再編は一巡し、国境を越えたM&Aに再編の舞台を移しているように見える。第一三共も第一製薬と三共が合併して誕生した会社であるが、日本における同業者とのM&Aは一段落している。各社とも今後は海外企業の買収に目を向けているようだ。日経新聞から抜粋すると、2007年7月に第一三共が米アムジェンから骨粗しょう症薬の国内での開発・販売権を獲得、2007年11月にアステラス製薬が米アジェンシスを買収、2007年12月にエーザイが米MGIファーマを買収、2008年4月に武田薬品工業が米ミレニアム・ファーマシューティカルズを買収、2008年5月に第一三共が独ユースリー・ファーマを買収と、海外企業の買収が続いている。
この買収劇は、日本に比べインドではより大きな話題になっている。先日インドに出張に行った際にも、現地の人がこの案件に関して大きな関心を持っていることが伝わってきた。日本では知名度の低いランバクシーという会社であるが、インド製薬最大手が買収されるということは、日本における武田薬品が買収されることと同様の意味合いを持つ。仮に武田薬品が海外の企業に買収されたとすると、日本でどのような報道がなされるか、容易に想像が付くだろう。まして、海外企業によるインド企業の買収では最大の案件だという。

(疑問1)
なぜ、日本の製薬メーカーが海外企業の買収を続けるのだろうか?

(ニュースはこう読め)
M&Aでは常にシナジーという言葉が使われる。簡単に言えば、買収によってどんなメリットがあるのかという意味だ。海外企業の買収の背景には国内市場の飽和が第一に上げられる。人口も減少傾向にあり、高度成長期のような需要拡大は望むべくもない。この状況では、海外に成長の機会を探す必要がある。
第二のポイントは、製薬業界は国内市場で十分な利益を上げていることが考えられる。製薬業界はおおむね、キャッシュリッチな業界であり、利益率も高く、資金も潤沢にある。国内で十分な利益が上げられなければ、海外企業の買収よりも国内事業の建て直しが急務となる。
第三のポイントは、新薬開発には多額の資金が必要であり、規模が大きい会社が圧倒的に有利なことである。仮に第一三共が新薬開発に成功しても日本市場だけを相手に販売していては、投資金額の回収に時間がかかる。海外市場に強力な販路をもつランバクシーと組むことによって、海外への販売が容易になる。この点は第一三共にとっての魅力であり、これがシナジーとなる。こうした背景があるため、M&Aによる規模の拡大は企業の競争力を増すことに繋がる。
最後に、新薬開発とジェネリック薬品の組み合わせである。これは、日本企業が海外企業を買収する理由にはならないが、ジェネリック薬品に強い会社がランバクシーだったということで、ランバクシーと同等の会社が日本にあれば、その企業も買収候補となったであろう。ジェネリック薬品市場は今後の拡大が見込まれるため、第一三共はそこも押さえれば今後の安定成長が期待できるのである。
つまり、第一三共がもっていなくて欲しい機能、1)海外での販売力、2)ジェネリック薬品事業の二つを満たす企業がランバクシーだったのである。
他の事例を見ると、新薬開発ベンチャー企業の買収も目立つ。これも、国籍を問わず、その様なベンチャー企業があれば、大手製薬会社としてはぜひとも取り込みたい(買収したい)ところである。

(疑問2)
なぜ、100%の買収ではなく、過半数の買収にとどめ、上場を維持するのであろうか?

(ニュースはこう読め)
この買収劇によって、ランバクシー、第一三共とも、利益の上昇が期待できる。その理由は、疑問1の回答で上げた通り。さて、ここで、皆さんは疑問に思わないだろうか。ある企業を買収してその企業が今後今まで以上に利益を上げられると予想するならば、なぜその企業を100%買収してその利益を100%享受しないのかと。
例えば、ランバクシーの現状の利益が100で、その利益は第一三共グループになることによって、110に押し上げられるとする。今の予定では、過半数をとるだけなので、増えた利益10のうち5.1しか第一三共に入らず、残りの4.9はその他の株主に流出してしまう。
この疑問に関しては、経営者の独立性という観点から考えることがヒントになる。今回の買収ではランバクシーの創業家が保有する三割の株式をすべて手放してもらうことが前提だった。しかしながら、100%買収となれば、現在のランバクシーの社長をはじめとする経営者の離脱も考えられる。インドビジネスに精通しているわけではない第一三共が100%ランバクシーの経営権をとり、運営することは現実的ではなく、現在の経営陣が残ることは必須であっただろう。
そのような観点からは、ランバクシーの社長にとっても、第一三共の社長にとっても、100%の買収は好ましい選択肢ではなかったと考えられる。

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