企業、積極投資へ転換、手元資金60兆円、3年ぶり減―円高でM&A最高
上場企業の手元資金が9月末時点で60兆円と3月末を8%下回り、半期ベースで3年ぶりの減少に転じたことが分かった。2008年のリーマン・ショック以
降、多くの企業は財務の安全性を重視して資金を積み増してきたが、グローバル競争の激化に対応して余裕資金の活用にカジを切ったためだ。円高を背景に海外
企業の買収件数は過去最高となり、低迷する株価のてこ入れを狙った増配も相次いでいる。
2011/12/03 日本経済新聞 朝刊 1ページ
(概要)
日本の大手企業の資金は潤沢だ。記事によると、2011年9月で上場企業の手元資金は60兆円ほど。日本の国家予算に匹敵する手元資金を保有していることになる。一定程度の手元資金は運転資金として保有しておかなければいけないものだが、残りは設備投資、研究開発、M&Aなどに有効に使い、将来の飯のタネ(事業のネタ)を探さなければならない。企業経営とは事業によって得た資金の一部は株主に還元し、一部は将来に投資することに他ならない。今年は震災復旧費用という特殊要因もあるが、海外のM&Aも目立つ。M&Aの検討には時間がかかることが多い。円高だからだといってすぐにできるようなものではない。従前から情報収集と検討が必要であり、ちょうどこの時期にうまくいったと見るほうが正しいだろう。今から海外企業を買収しようと検討しても、買収する頃には円安になっているかもしれないのだから。
(疑問1)円高になるとM&Aで得をするの?
(コメント1)
投資判断は、投資金額以上のリターンが得られるかどうかで決まる。円高になると同じ外貨投資に必要な円資金が少なくて済むというだけである。ただし、円高によって以前はとても高くて手が出せなかった投資案件も投資できるようになる効果はある。あるいは、以前の為替水準では2件しか投資できなかったが3件投資できるようになる、つまり、同じ円投資金額で多くの外資企業を買収できるといった効果は考えられる。例えば、1億ドルの企業を買収することを考えてみると、以前は為替レートが100円だとして100億円の資金が必要となる。今であれば、80億円以下で買収できる。100億円の投資資金はないが、80億円の投資資金は捻出できるということであれば、その投資は実行されるだろう。
しかしながら、もう一つ注意すべき点がある。外貨投資のリターンは外貨であり、その外貨も円に換算すると低くなってしまうので、結果的には同じになるということである。つまり、お買い得かというとそうではないということだ。上記の例で言えば、1億ドルの投資で毎年1000万ドルのリターンを得られると計算していたとしよう。以前のレートでは10億円のリターンが得られていたはずだが、今では8億円以下に減ってしまうということだ。
さらに、これ以上の円高が進むようであれば、外貨資産が目減りしてしまうので、かえって損をする可能性もある。為替がどちらに進むのかは誰にもわからないので、外貨による投資金額と外貨のリターンを比較して投資判断をすべきであって、円高だから投資するということにはつながらない。
(疑問2)円高とは関係ないとすると、なぜ日本企業は海外へ積極投資をしているの?
(コメント2)
企業は持続的な成長なしには生き残れない。成長のためには、投資が必要となる。日本経済が高成長を続けていた時代は、日本に投資をすることが優先だったであろう。しかし、日本に投資をしても、日本自体の成長が見込めなければ、リターンは見込めない。
そうすると、成長を求めて海外企業を買収するという選択肢が浮上してくる。
日本人も、日本企業も、内弁慶が多いが、もはやそんなことを行っていられない時代になってきたと言えるだろう。
逆に言えば、日本にとどまっている上場企業はどのように成長戦略を描いていくのか難しいところだ。
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