企業、積極投資へ転換、手元資金60兆円、3年ぶり減―円高でM&A最高

上場企業の手元資金が9月末時点で60兆円と3月末を8%下回り、半期ベースで3年ぶりの減少に転じたことが分かった。2008年のリーマン・ショック以 降、多くの企業は財務の安全性を重視して資金を積み増してきたが、グローバル競争の激化に対応して余裕資金の活用にカジを切ったためだ。円高を背景に海外 企業の買収件数は過去最高となり、低迷する株価のてこ入れを狙った増配も相次いでいる。
2011/12/03  日本経済新聞 朝刊  1ページ

(概要)
日本の大手企業の資金は潤沢だ。記事によると、2011年9月で上場企業の手元資金は60兆円ほど。日本の国家予算に匹敵する手元資金を保有していることになる。一定程度の手元資金は運転資金として保有しておかなければいけないものだが、残りは設備投資、研究開発、M&Aなどに有効に使い、将来の飯のタネ(事業のネタ)を探さなければならない。企業経営とは事業によって得た資金の一部は株主に還元し、一部は将来に投資することに他ならない。今年は震災復旧費用という特殊要因もあるが、海外のM&Aも目立つ。M&Aの検討には時間がかかることが多い。円高だからだといってすぐにできるようなものではない。従前から情報収集と検討が必要であり、ちょうどこの時期にうまくいったと見るほうが正しいだろう。今から海外企業を買収しようと検討しても、買収する頃には円安になっているかもしれないのだから。

(疑問1)円高になるとM&Aで得をするの?

(コメント1)
投資判断は、投資金額以上のリターンが得られるかどうかで決まる。円高になると同じ外貨投資に必要な円資金が少なくて済むというだけである。ただし、円高によって以前はとても高くて手が出せなかった投資案件も投資できるようになる効果はある。あるいは、以前の為替水準では2件しか投資できなかったが3件投資できるようになる、つまり、同じ円投資金額で多くの外資企業を買収できるといった効果は考えられる。例えば、1億ドルの企業を買収することを考えてみると、以前は為替レートが100円だとして100億円の資金が必要となる。今であれば、80億円以下で買収できる。100億円の投資資金はないが、80億円の投資資金は捻出できるということであれば、その投資は実行されるだろう。

しかしながら、もう一つ注意すべき点がある。外貨投資のリターンは外貨であり、その外貨も円に換算すると低くなってしまうので、結果的には同じになるということである。つまり、お買い得かというとそうではないということだ。上記の例で言えば、1億ドルの投資で毎年1000万ドルのリターンを得られると計算していたとしよう。以前のレートでは10億円のリターンが得られていたはずだが、今では8億円以下に減ってしまうということだ。

さらに、これ以上の円高が進むようであれば、外貨資産が目減りしてしまうので、かえって損をする可能性もある。為替がどちらに進むのかは誰にもわからないので、外貨による投資金額と外貨のリターンを比較して投資判断をすべきであって、円高だから投資するということにはつながらない。

(疑問2)円高とは関係ないとすると、なぜ日本企業は海外へ積極投資をしているの?

(コメント2)
企業は持続的な成長なしには生き残れない。成長のためには、投資が必要となる。日本経済が高成長を続けていた時代は、日本に投資をすることが優先だったであろう。しかし、日本に投資をしても、日本自体の成長が見込めなければ、リターンは見込めない。
そうすると、成長を求めて海外企業を買収するという選択肢が浮上してくる。

日本人も、日本企業も、内弁慶が多いが、もはやそんなことを行っていられない時代になってきたと言えるだろう。

逆に言えば、日本にとどまっている上場企業はどのように成長戦略を描いていくのか難しいところだ。

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インド、小売り外資規制緩和 日本勢、出店戦略を本格化

インド政府が24日、スーパーやコンビニエンスストアなど総合小売業へ最大51%の外資出資を認めることを決定したことで、日本や欧米の小売業の出店戦略 が本格化しそうだ。ローソンは2012年中に1号店の開店を目指し、イオンも市場調査を進める。ただ、物流網の未整備や地価高騰など課題も多い。
 インド政府は06年に専門店など単一銘柄の商品を扱う小売業に51%まで外資の出資を認め、今回100%出資も可能になる。複数銘柄の商品を扱う総合小売業には外資の出資を一切認めていなかったが、大都市圏で最大51%まで認められるようになる。
2011/11/26  日本経済新聞 朝刊  9ページ

(概要)
インドには外資規制があるが、徐々に撤廃されてきている。小売り外資規制はその象徴的なものの一つであったが、それが撤廃されるということはひとつの転換期と考えられる。
従来は、シングルブランドショップ(例えば、イケア、コーチ、エルメス、などひとつの店でそのブランドしか販売していない店舗)に関しては、進出が認められていた。それでも出資比率は51%までに制約されていたので、現地企業との合弁とせざるを得なかったのだ。それが100%出資を認められるようになったということは大きい。
さらにマルチブランドショップ(例えば、スーパーマーケットや百貨店は多くのメーカーの商品を扱うためマルチブランドショップとなる)は、一切進出が認められていなかった。それが51%までという条件付きながら進出が認められたということだ。
ということは、これまで、インドに進出するとしてもメーカーが中心であったが、小売業も進出の可能性が大きく広がったことになる。
そもそも、外資規制の背景にあるのは、小売市場の8割以上を占めるといわれるキラナ(家族経営型の零細・小規模商店)の存在にある。インドでは欧米(日本)のように大型の小売店舗は少なく(そもそも車は多いが、車で買い物に行くほど所得は高くない)、近所の小売店舗で買い物を済ませる人が大多数だ。写真でしか見たことがないが、終戦直後の日本のイメージだろうか。掘立て小屋にレジもなく商品をバラ売りしているようなイメージである。まとめ買いする所得がないので、シャンプーも一回分とか、調味料も一回分とか、販売単位が細かい。そういうお国柄でもあるので、大型小売店舗の進出は雇用に対する深刻な影響があると懸念されている。一時期、日本の地方都市でも大規模小売店の台頭により駅前の商店街がシャッター商店街になるという議論が巻き起こったが、まさにそういうことだろう。
その規制を撤廃するということは、政治的には難しい判断だったのではないか。

(疑問1)
日本企業の対応は?

(コメント1)
記事によると、ローソン、無印良品、ユニクロ、は既に検討を始めているか意欲を見せている。アメリカもウォルマートも同様だ。
これから進出を検討する企業はマルチブランドショップであろうから、現地のパートナー選びが重要となる。マルチブランドショップはメーカーから仕入れて販売するわけであり、現地の仕入れネットワークを築くことから始めなければならない。そういう意味でも、現地のパートナーと組む方が進出しやすいだろう。

この場合、現地企業を買収するということは考えにくく(ありえなくはないが)、むしろ現地企業と新たに会社を設立し、日本企業が51%出資するというシナリオが現実的といえる。
小売業も日本にとどまっている限り、成長には限界がある。メーカーに続いて元気な日本企業の積極的な進出を期待したいところだ。




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丸紅、ブラジル港湾社買収、46億円で、穀物安定輸出へ設備確保

丸紅はブラジルで穀物輸出用の港湾設備運営会社を完全子会社化した。買収総額は6000万ドル(約46億円)以上と見られる。積み込み設備を自ら保有して穀物を大量に調達、輸出できる体制を整える。新興国の経済成長で穀物の争奪戦が激しく、穀物の調達基地として南米の重要性が高まっている。他の商社も南米で穀物事業を強化しており、調達力を高め日本への安定供給にもつなげる。
2011/11/25  日本経済新聞 朝刊  11ページ

(プレスリリース)
http://www.marubeni.co.jp/news/2011/111125.html

(概要)
丸紅も他の商社と同様に資源(エネルギー・金属)で大半の利益を稼いでいる。残りの利益は、機械、素材、生活産業でほぼ同額といった事業構造だ。食料は生活産業事業に属する。
全社から見ればまだ大きな事業ではないかもしれないが、今後の途上国の人口増加と経済成長から、食料と水の不足も懸念されている。丸紅はアメリカや南米などから日本のみならず、中国をはじめとするアジア各国へも輸出を手がけている。また日本は世界第二位の穀物輸入国であり、仮に日本の需要が今後増えないとしても、安定した供給源を確保しておくことは、商社としても、また国としても非常に重要といえる。

(疑問1)
なぜ安定供給のために生産者ではなく、
港湾設備運営会社に投資をするの?

(コメント1)
丸紅は日本の穀物輸入のトップシェア(20%)を占めている。その競争力の源泉の一つが、各港におけるの穀物サイロ網である。こうしたネットワークを築くことが強みとなり高いシェアを維持しているのである。また、こうしたサプライチェーンネットワークを構築することで単に食料の売買による利益のみならず、設備の稼働による収益が見込めることも投資の理由の一つだろう。食料の売買による利益と、このようなインフラ投資からあがる利益のどちらが大きいのか気になるところではある。

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日立子会社買収、米社の計画承認、欧州委、条件付きで

欧州連合(EU)の執行機関、欧州委員会(EC)はベルギーで現地時間2011年11月23日、米国のハードディスク装置(HDD)大手、 Western Digital(WD)による日立グローバルストレージテクノロジーズ(HGST)の買収を条件付きで認めると発表した。

 3.5インチHDDの生産に関わる重要資産を第三者に売却することが条件で、WDは売却先を見つけるまでHGSTの買収を完了できない。Joaquin Almunia競争政策担当副委員長は「これにより業界における競争が完全に回復される」と述べている。

 具体的な条件は、製造施設の売却、知的財産権の売却先への譲渡、従業員の移管、HDD部品の供給など。これらが実施されば、欧州経済領域で市場競争を著しく阻害する恐れはないとしている。

 WDと日立製作所は2011年3月、日立の100%子会社かつHGSTの持株会社であるシンガポールのViviti Technologiesを、現金と株式を合わせ約43億ドル相当でWDが買収することで合意したと発表した。これを受けてECの競争法当局が同年5月に本格的な調査を開始した。

 また今回の承認に先立つ2011年10月、ECは米Seagate Technologyによる韓国Samsung ElectronicsのHDD事業買収を承認した。Seagate/Samsungの買収が先に承認されているため、WD/HGSTが合併することで、WD、Seagate、東芝の3社へと大手HDDメーカーが減ることをECは懸念していた。

(プレスリリース)

http://europa.eu/rapid/pressReleasesAction.do?reference=IP/11/1395&format=HTML&aged=0&language=EN&guiLanguage=en

(概要)

子会社の売却にあまり積極的ではない日本企業、しかも伝統のある日立が子会社を43億ドルで売却することは、かなりの衝撃があった。日本の企業が子会社を売却するとしても赤字事業を切り離すといった消極的なものが多かったからだ。

しかしながら、当事者間の合意だけでは完了しないのがM&Aだ。いわゆる独占禁止法により競争を阻害するようなM&Aには今回のケースのように待ったが掛かり、条件付きとなることもある。つまり、市場の寡占化が進むと競争原理が働かなくなる、というのがその理由だ。最悪のケースはM&Aが認められないということもありえる。交渉を進めていた当事者はしばらく気をもんでいたことだろう。

とはいえ、これから売却先を見つけなければならない。売却先をさがすべく、関係者はこれから奔走することになる。ここを同業他社のSeagateまたは東芝に売却するのか、あるいは敵に塩を送ることを避け、全く異なる企業に売却するのか、注目したい。ただ、後者の場合はこれを買いたいという候補企業も見当たらないだけに、難しいだろう。

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伊藤忠、米天然ガス社買収

伊藤忠商事は米投資ファンドなどと組み、米石油・ガス会社サムソン・インベストメント(オクラホマ州)を買収する。買収総額は70億ドル(約5400億 円)規模。米国内で「シェールガス」と呼ばれる新型天然ガスの豊富な権益を持つサムソンを買収し、2015年以降に液化天然ガス(LNG)として日本など への輸出を目指す。原子力発電所の再稼働にメドが立たず、代替の火力発電所向けにLNG需要が急拡大する日本にとって安定調達につながりそうだ。
2011/11/23  日本経済新聞 朝刊  1ページ

(概要)
今年度は武田薬品工業が1兆円規模のメガディールを実施したが、5400億円も相当な規模の買収案件だ。さすがの伊藤忠商事も単独では投資せずに投資ファンドと組んでいる。ところで、日本の新聞を読んでも、そのニュースが会社発表のものかどうかということが明記されていないのは、問題だと思う。海外のニュース(ロイター)では、A deal is near completion, with an announcement expected as early as Tuesday, the two sources said.と書いてあって、まだ正式に完了していない(契約書にサインしていない)ことと、会社発表ではなく、関係筋からの情報であることがわかる。FTではもう少し具体的に記載されていて、The takeover, which was set to be announced this week according to people close to the situation, ........今週発表予定であることがわかる。重要なニュースを読むときは、会社からの発表があるかどうか、海外の報道はどうか、の2点を確認することをおすすめしたい。

(疑問1)
なぜ、商社は天然ガスに投資するの?

(コメント1)
商社の買収案件は、エネルギー関連、権益関連が多い。これは、商社が今何で稼いでいるのか、これから何で稼いでいくのか、を考えると必然的にこの分野に行き着く。おそらく今後も商社の大型買収案件は、エネルギー分野になるだろう。伊藤忠商事と言えば、繊維事業のイメージが強いかもしれないが、実態は異なる。今期の利益予想は2400億円であるが、その半分以上の1540億円は、金属エネルギー事業で稼いでいる(ちなみに、繊維部門の利益は10%以下の210億円)。

(疑問2)
なぜ、自社単独で投資せずに投資ファンドと組むの?

(コメント2)
FTの記事によると
($7.2bn deal that would be the largest leveraged buy-out globally outside the real estate sector this year.)、本年最大のレバレッジドバイアウト案件のようだ。レバレッジドバイアウト(LBO)とは、買収会社が単独で買収するのではなく、投資ファンド(本件ではKKRという世界最大の投資ファンド)と共同で買収する手法だ。
LBOを利用する場合は、投資金額が大きい場合に利用される。伊藤忠の財政状態を確認してみると、2011年9月末の純有利子負債は1兆8000億円であり、純資産1兆2000億円の1.5倍である。さらに5000億円以上の借入はリスクが大きいと判断したのだろう。
こうした財務的な情報は今後公表されるであろうプレスリリースの記載内容を見て、フォローしていきたい。

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富士フイルム、バイオ医薬事業買収

富士フイルム、バイオ医薬事業買収、米メルク製造子会社、400億円で。

2011/02/28  日本経済新聞 朝刊  1ページ 

 

成長分野で大手を追撃
 富士フイルムは製薬世界2位の米メルクから、がんなどの治療に使うバイオ医薬品の製造
事業を
買収する。約400億円を投じ、3月末をめどにメルクの子会社2社の全株式を取得。研究中のがん治療薬を自社で生産する体制を整え、高い成長が見込まれるバイオ医薬品で製薬大手を追い上げる。異業種の大手企業の本格参入により、成長分野を巡る競争に拍車がかかりそうだ。

 

(疑問1

なんで、フィルム会社が医薬品事業を買収するの?

 

(コメント1

始めに富士フィルムの売上の内訳を確認してみましょう。事業領域には「イメージングソリューション」「インフォメーションソリューション」「ドキュメントソリューション」の3つの事業フィールドがあります

イメージングソリューションは、いわゆる写真ビジネスです。これは皆さんにもおなじみですね。ドキュメントソリューションとは、いわゆるコピー機のビジネスで、富士フィルムではなく富士ゼロックスで展開しています。こちらもお馴染みでしょう。ゼロックスとの合弁事業ですが、富士フィルムホールディングスが75%の株式を保有しています。

2兆円の売上のうち、大凡半分はドキュメントソリューション事業で構成されています。富士フィルムの名前が前面に出ていますが、実態は富士ゼロックスのコピー機ビジネスの貢献が最も大きくなっています。では、その次はイメージングソリューション(いわゆる写真関連ビジネス)でしょうか?

実は、イメージングソリューションビジネスの売上は全体の16%程度に過ぎません。富士ゼロックスを除いた富士フィルムの稼ぎ頭は、インフォメーションソリューションビジネスなのです。

インフォメーションソリューションビジネスとは聞きなれない名前ですが、1936年のX線フィルム発売に始まり、今では、事業領域を機能性化粧品・機能性食品の「予防」分野に広げ、さらに2008年には医薬品事業に本格参入し、「治療」分野に拡大しているのです。

有価証券報告書や企業のホームページを見ると、富士フィルムという社名や、一般的なイメージとはかけ離れた実態が浮かび上がってきます。

日経の記事にもある通り、富士フィルムは2008年に富山化学工業を買収し、医薬事業への進出を本格的に進めています。こうした下地があって、今回の買収に繋がっているのです。

富士ゼロックスのビジネスが業績を下支えしているとはいえ、イメージングソリューションの売上は20063月期の6,894億円から20103月期の3,455億円へと半減しており、フィルムカメラからデジカメ化が進む現状では、この傾向は続くでしょう。それにしても4年で半減とは、想像以上に劇的な変化です。こうした環境の変化に対応するためには、新規の事業分野への投資を加速することが、企業の生き残りのためには不可欠です。

 

(疑問2

なんで、医薬品会社であるMerckがバイオ医薬品の税増事業子会社2社を売却するの?

 

(コメント2

M&Aの取引では、常に、売り手と買い手の2社が登場します。その2社の利害が一致したときに初めて取引が成立します。よって、ある企業(事業)を買いたいと思う会社があっても、その企業の株主がその株式(または事業)を売るつもりがなければ、そもそも取引が成立しません。この点が通常の商品やサービスの売買と決定的に異なる点です。

儲かっている事業、成長性の高い以上を売却するということは、日本企業の場合にはめったにないことですが、Merckはなぜ、売却を決意したのでしょうか。

 

Merckは世界第二位の製薬会社ですが、2年前(2009年)3月にSchering-Plough Corporationと合併をしています(実質的にはMerckによる買収)。

MSD Biologics (UK)Diosynth RTPはともにMerck100%子会社で、MSD BioManufacturing Network として一体運営されていますが、MSD Biologicsは、合併前のMerckの子会社、Diosynth RTPは合併前のSchering-Ploughの子会社という歴史的経緯があるのです。

そして、Bloombergの記事によると、Merckはバイオ事業に対する開発は続ける意思はあるもののバイオ事業自体はMerckの主力事業ではないようです。

http://www.bloomberg.com/news/2011-02-27/merck-agrees-to-sell-its-u-s-u-k-units-for-biotech-supplies-to-fujifilm.htmlMeri

 

医薬品の開発には多額の資金がかかりますし、Schering-Plough Corporationとの合併で借入金も増えているようなので主力事業以外は売却して現金化するということが今回の取引の背景にはありそうです。

 

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日立、HDD事業を売却 日本企業も本格的に事業売却の検討をはじめる?

日立、HDD事業を売却、世界最大手に3500億円で。

2011/03/08  日本経済新聞 朝刊  1ページ 

 日立製作所は7日、パソコンやデジタル家電のデータ記録に使うハードディスク駆動装置(HDD)事業をHDD世界首位の米ウエスタン・デジタル(WD、カリフォルニア州)に売却すると発表した。売却額は約43億ドル(約3500億円)。日立は市況変動で収益が安定しない事業を本体から切り離す成長戦略を推進しており、経営資源を主力の社会インフラ事業に振り向ける。
 全額出資子会社でHDD世界3位の
日立グローバルストレージテクノロジーズ(HGST、カリフォルニア州)の全株式を9月末までに売却する。対価として現金35億ドルとWD株2500万株を得る。日立はWDの発行済み株式の10%を保有する筆頭株主となり、2人を取締役として派遣する計画だ。

(疑問1

世界3位の事業なのに、なぜ売却するの?

(コメント1

日本の企業が黒字事業を売却することは非常にめずらしく、このようなニュースが報道されると、日本の会社も変わるかもしれないという期待もでてきますね。

そもそも日立のHDD事業は業績の不振が続いていたため、以前から売却のうわさが流れていました。

http://jp.reuters.com/article/technologyNews/idJPJAPAN-28070020070926

それが、一転黒字化に成功しました。当時のHGSTのCEOは現在の日立の社長です。

http://itpro.nikkeibp.co.jp/article/NEWS/20080417/299394/

さて、赤字事業であれば、売却や撤退を検討しますが、黒字事業となれば継続保有するのが通常でしょう。まして、今回は現在の日立の社長が立て直した事業です。それにもかかわらず、2010112日にこの事業を売却すると発表しました。このときは株式公開する発表であり、段階的に株式を売却することを予定していたのでしょう。日立は多くの上場子会社を100%子会社化することを発表しており、その流れとは正反対です。

つまり、このHDD事業の黒字化が達成されても、いずれは完全に売却することを計画していたはずです。日経の記事にも収益が安定しない事業を本体から切り離す成長戦略を推進している、とあります。HDD事業は長く赤字が続いており、市場は拡大することが予想されていますが、価格競争が厳しいことを実感しているのでしょう。売れ筋の外付けHDDは、発売から1年でなんと65%も価格が下落しています。

http://kakaku.com/item/K0000093205/pricehistory/

自社が比較的苦手としている事業領域は他社に売却し、その売却資金を自社の得意分野(日立の場合は社会インフラ事業)に振り向けるということは、当然と言えば当然なのですが、なかなか事業(とくに黒字事業)を売却する決断ができなかった、というのが今までの日本企業の典型的なパターンでした。

今回はそもそも売却を件としていた事業があって、株式の公開を予定してましたが、それ以上の好条件をウエスタンデジタルが示したことが日経によって報道されております。

(疑問2

この取引で得をするのは、ウエスタンデジタル?それとも日立?

(コメント2

日立はHDD事業の株式公開を予定してましたが、それ以上の好条件をウエスタンデジタルが示したことが日経によって報道されております。

つまり、日立は株式公開によって得られる資金よりも、ウエスタンデジタルにHGSTを売却することによって得られる資金の方が大きかったということになります。株式公開した場合にいくらの値段がついたかは神のみぞ知る世界ですが、今回日立が手にした43億ドルよりも低いと予想されたいたことはわかります。

なぜそのようなことが起こるかというと、HGSTを単独で経営するよりもウエスタンデジタルと一緒に経営した方が利益が増えるため、ウエスタンデジタルは高い価格でHGSTを買収しても十分に元がとれるという計算が働いたはずです。例えば、研究開発費を2社別々で行うよりも共同で行えば、コストの削減につながります。

株式市場でも、この買収は評価されたようです。201137日のウエスタンデジタルの株価の終値は34.68ドルと、前週末の終値30.01ドルから15.56%も値上がりしました。

時価総額にすると69億ドルが80億ドルになった計算です。この買収によって、10億ドルもの価値が創造されたことになります。そのため、買収対価の一部を株式で受け取る日立にとっても、受取対価が上昇しました。

さらに、201138日の日立の株価も前日比で1.78%上昇しました。

このように、M&Aによって会社経営が効率化され、その結果として価値が創造されるのです。両社ともによい取引だったといえます。

今後もこのようなM&A取引が増えてくるといいですね。

 

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M&Aによる相乗効果とは? (伊藤忠による欧州タイヤ小売業の買収)

車用品1400店、欧州で買収、850億円、伊藤忠、タイヤ販路拡充。

2011/03/03  日本経済新聞 朝刊  1ページ

 伊藤忠商事は欧州のタイヤ小売り大手を買収する。欧州で約1400店の店舗網を持つ英クイックフィット社を約850億円で欧州系ファンドから買い取る。伊藤忠は英国でタイヤの卸売事業を手がけている。大規模な店舗網を傘下に収めて相乗効果を発揮。収益拡大を狙う。

 

(疑問1

なぜ、商社がタイヤの小売店を買収するの?

 

(コメント1

伊藤忠商事の事業分野の一つがゴム・タイヤ分野です。総合商社最大級の天然ゴム集荷・加工事業から、日・米・欧におけるタイヤ卸/小売事業に至るバリューチェーンを確立しています。実際に、欧州ではタイヤの卸売企業を買収していますし、

今回は、小売企業を買収することでタイヤ販売事業の拡大を狙ったものと言えるでしょう。卸売企業が小売企業を買収する、あるいはその逆を垂直統合と言います。仕入先と販売先の関係ですね。

仕入先と販売先は、商品の売買価格を巡って利害が対立します。卸売が儲かれば、その分小売企業の利益が減るという構図になるからです。卸売と小売が同じ企業グループになると、どちらが利益を取っても、全体でみれば同じことになります。

今回買収の対象となったクイックフィット社が伊藤忠の欧州におけるタイヤ卸売子会社ステイプルトンズ社とどのような取引関係にあるのかは、この記事には明記されていませんが、大手企業同士なので、おそらく取引関係にあるはずです。

また、ステイプルトンズ社は卸売りだけではなく小売りを行う店舗網も持っているようなので、お互いのノウハウを共有して収益性を上げることも期待できそうです。同じ業種同士の統合を水平統合といいますが、今回は、垂直統合と水平統合の二つの効果が期待できるということが言えそうです。

 

(疑問2)買収価格はどうやって決まるの?

 

(コメント2

基本的にM&Aの取引価格は、その買収対象の会社の収益性によって決まります。つまり儲かっている企業の株価は高く、儲かっていない企業の株価は安くなります。これは、東証に上場している株価がどうやってきまるのか、ということと同じ理論です。

その一方で、M&Aでの株価算定では買収後にどれくらい価値が上がるかを考慮します。つまり、買収前では利益が10だったものが、買収によって利益が11になるだろうということを考慮するのです。上記の例でいえば、水平統合や垂直統合によって、利益が増えるのであれば、その点は考慮して価格が決まります。

今回の取引は、入札で行われたようです。入札では、会社を売却するときに、その会社(このケースでは英クイックフィット社)を買いそうな複数の会社に声をかけ、それぞれの買収希望会社から、いくらなら買うかという提案を受けるのです。

入札によって競争原理が働いて価格がつりあがるケースもあります

今回は、営業利益が100億円の会社を850億円で買収しているので、やや高めという気もしなくはありませんが、極端に高値でもないと思います。商社にはそれぞれ投資判断基準がありますから、その基準を超えない範囲での価格で交渉がまとまったのでしょうね

なお、本件は、昨日のエーザイの記事に引き続き、この記事の内容は会社から正式に公表されたものではありません。(日経の記事が出た2011年3月3日の16時に正式に公表されました)

でも、海外ではもっと詳しく報道されていて、興味深いです。(日経新聞にも、入札の事実は記載されていません)

http://www.cityam.com/news-and-analysis/japanese-snap-kwik-fit

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日経の記事って (エーザイとサノフィの提携)

エーザイ、仏大手と提携、サノフィと――ワクチン世界販売、まずインフル。
2011/03/02  日本経済新聞 朝刊  1ページ 
新興国需要狙い参入
 エーザイは製薬世界大手の仏サノフィ・アベンティスグループと提携し、ワクチン事業に参入する。エーザイが開発した薬剤の効果を高める技術を活用し、サノフィがインフルエンザ用を製造。2014年にも両社の販路を通じ世界市場で販売する。日本の製薬会社がワクチンを海外で本格展開するのは初めて。新興国中心に拡大する需要を取り込み、国際競争力を高める。
 
(エーザイのコメント)
2011/03/02 8:25
本日(平成23 年3月2日)の一部報道において、当社のワクチン事業に関連する記事が掲載されま
したが、当社が発表したものではありません。
当社は、サノフィー・パスツール社と、2005 年10 月に「E6020」をワクチンの免疫効果を高めるワクチンアジュバンドとして使用する非独占実施権を供与する契約を締結し、現在、サノフィー・パスツール社
が前臨床試験を進めている段階です。記事に記載されている、臨床試験、生産、販売に関する時期・内容については何も決定しておりません。
 
(疑問1)
日経新聞の記事は、会社が発表した事実に基づくものではないの?
 
(コメント1)
私は気になる日経新聞の記事を見たときには、必ず、会社のプレスリリースや東証の適時開示資料を見るようにしています。時々このように日経の記事と会社からの正式なコメントが異なる場合があるからです。
しかしながら、このような会社発表の後で、日経新聞の記事の内容を追認するような発表をすることもあります。日経も当然スクープを狙っていますから、会社の社長交代のニュースや、M&Aのニュースなどが会社発表の直前に公表されることはたまにあります。
新聞記事を見てすぐに株の売買をすることもあるでしょうが、事実関係は、しっかり確認してからの方が良いでしょう。もちろん、確認している間に株価が動いたりすることもあるので、難しいですね。
 
(疑問2)
この記事が事実だった場合、エーザイの株価に影響はあるの?
 
(コメント2)
記事が事実だとしても、ワクチンを販売するのは2014年とだいぶ先の話です。臨床試験にも時間がかかるでしょう。とはいえ、提携をしなければ(自社のノウハウだけでは)ワクチンを製造販売できないことがこの記事から読み取れますので、そういう点では、品ぞろえが増えるというメリットはあります。
その一方で、インフルエンザの流行によって需要が大きく変動するワクチンの製造販売にはリスクもあるので、単純にエーザイの株価が上がるということはなさそうです。
実際に、3月2日のエーザイの株価の終値は3,090円で、前日比5円安でした。
もっとも、3月2日の東京株式市場では4営業日ぶりに大幅反落し、大引けは前日比261円65銭(2.43%)安の1万0492円38銭でした。下げ幅も2010年(前年)8月31日以来、約半年ぶりの大きさでしたから、その他の株価に比べれば堅調だったともいえます。

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財務アドバイザーって、何をするの?

財務アドバイザー、証券、激しい提案合戦、新日鉄・住金、合併へ万全期す。

2011/03/01  日本経済新聞 朝刊  7ページ 


合併の検討に着手した新日本製鉄と住友金属工業は28日、合併手続きを支援する財務アドバイザーの証券会社8社を内定した。2兆円規模に達する大型M&A(合併・買収)を巡り、国内外の主要証券は激しい提案合戦を展開。新日鉄側の三菱UFJモルガン・スタンレー証券、住金側の日興コーディアル証券など両社はそれぞれ4社を指名し、国内外の主要証券がほぼすべて顔を並べる重厚な布陣とした。合併の検討に着手した新日本製鉄と住友金属工業は28日、合併手続きを支援する財務アドバイザーの証券会社8社を内定した。2兆円規模に達する大型M&A(合併・買収)を巡り、国内外の主要証券は激しい提案合戦を展開。新日鉄側の三菱UFJモルガン・スタンレー証券、住金側の日興コーディアル証券など両社はそれぞれ4社を指名し、国内外の主要証券がほぼすべて顔を並べる重厚な布陣とした。

 

(疑問1)財務アドバイザーって何をするの?

(コメント1

財務アドバイザーとは、一般的にはあまり馴染みのない言葉かもしれません。通常M&Aを実行するときには、それぞれの会社の担当者だけで事務手続きを行うのではなく、外部の力も借りて作業を進めることが一般的です。

財務のアドバイザーというと、なんだか資金繰りの話をアドバイスるするかのように聞こえるかもしれませんが、財務アドバイザーはM&Aのアドバイスをする、あるいは、各種の作業を手伝う人を指します。

皆さんは合併と買収の違いって、考えた事ありますか?買収は、ある会社が別の会社を買うわけですから、通常は株を現金で買って、その株主にお金を支払うわけです。一方、合併は二つの会社が一つの会社になることであり、その時には、お互いにお金を受け取ったり、払ったりすることはありません(もちろん例外はあります)。つまり、財務アドバイザーは合併の時にクライアントに対してお金のアドバイスはしないのです(買収の時に資金が足りなければ、その資金調達のアドバイスをすることはあります)。

では、財務アドバイザーは何のアドバイスをするかというと、合併に際して生じる各種の問題を解決するためのアドバイスをしたり、合併のプロジェクトが円滑に進むようにお手伝いをするのです。

元々2つの会社が1つになるわけですから、そのために調整しなければならないこと、準備しなければならないことはたくさんあります。特に、このような大きな会社同士が1つの会社になるというときには、影響が大きく、作業は膨大になるでしょう。

法律的には、まず合併契約書を作成して、合併する両社の取締役会がそれぞれ承認し、さらにそれぞれの会社の株主総会で承認されれば、合併することができます。しかし、その手続きだけを行っても、実態は2つの会社のままです。さらに、それぞれの子会社が多数存在するわけですから、それらをどのように統合していくのか、という問題も出てくるでしょう。システムの統合だけでも相当時間がかかりそうです。合併後のあるべき姿を想像しながら、それに向かって、いつまでにどのような作業をすればよいのかを決めていかなければなりません。

JFEが誕生した時も、川崎製鉄と日本鋼管はすぐには合併せずに、持ち株会社をつくって、時間をかけて統合していきました。今回のケースでは社長同士のトップ会談で、合併(の方向で)ということを決めました。この規模の会社の合併となると前例もないでしょうし、持ち株会社というワンクッションをおかずに、いきなり合併ということになると、さらに時間も限られてきます。公正取引委員会に対して書類を提出することも必要ですし、海外の株主に対しても説明が必要になります。また、海外当局の認可を取らなければならないかもしれません。そうした手続きに不備がないように、それぞれ4社のアドバイザーを指名したのだろうと思います。

 

(疑問2)財務アドバイザー各社に特徴はあるの?

(コメント2

外資系の証券会社は、当然ですが、海外の情報網が充実しています。したがって、海外企業を買収するときには、日系証券会社よりも、外資系証券会社をアドバイザーとして指名することが(結果的に)多いでしょう。ただし、野村証券も破たん後のリーマンを買収した結果、今では海外ネットワークが充実してきています。野村証券は、財務アドバイザーの分野においても日本でナンバーワンの地位でしたが、今回の財務アドバイザーに指名されていないことが、不思議です。何か事情があったのでしょうか。

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